芥川龍之介作 『桃太郎』私は子供の頃、昔話の桃太郎に違和感があった。なぜ、桃太郎は、何もしていない鬼たちを成敗(せいばい)するのだろう、桃太郎はひどい人だと思っていた。22歳ごろに、芥川 龍之介の作品の『桃太郎』に出会い、同じ事を考えている人がいたのだと共感したものだった。 鬼と呼ばれている人たちが、あるところで、平和に暮らしているところへ、桃太郎が突然現れ、「鬼退治だ。」と、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)暴れ回った挙句(あげく)に、鬼と呼ばれている人たちが日々蓄えていた財産を、正義を笠にした、桃太郎が略奪したという、おはなし。 鬼という名前だったというだけで、あるいは、人から勝手に鬼と決め付けられただけで、悪いこともせずに暮らしている所へ、鬼だから、悪い。鬼だから最低と、《成敗》の名の下に、いじめや虐待、そして、略奪をする。このようなことは結構、世の中に多いものである。 |